One STEP
お姉ちゃんはゴホンっと、咳を1つすると目の色を変えてこう質問してきた。
「香澄は演劇部に入ってって言われてどう思ったの?」
………。
やっぱりお姉ちゃんは何か勘違いをしているんじゃないだろうか。
あたしは演劇部に入るか、入らないかを相談したんじゃない。
けれど、お姉ちゃんの目の色があまりにもさっきとガラッと変わったもんだから、あたしは何も言わず答えだけを口にした。
「あたしは…部活に入る気はない」
お姉ちゃんだって分かるはず。
お姉ちゃんは中高と帰宅部だった。
もちろん、あたしはお姉ちゃんの跡を継ぐ。
帰宅部部長になる。
別にそれでいい。
「部活にエンジョイしてみれば?」
「…お姉ちゃんに言われたくない」
そんなことお姉ちゃんに言われても説得力の欠片もがない。
お姉ちゃんも帰宅部だったじゃないか。
「あたしさぁ、今思えば部活入ってればなぁって思うんだよね」
お姉ちゃんはゆっくりと話し始めた。