One STEP
「慎也先輩が会ったらそう言えって」
慎也先輩…?
慎也…あぁ、もしや一番最初に会った藤田先輩のことかな…?
「よっぽど気に入っちゃったみたいだったけど。まぁ確かに君、声いいよね」
あたしは唖然としていた。
あたしの声って…一体どんなパワーがあるの?!
そんなに凄いの?!
みんな藤田先輩に洗脳されているんじゃないだろうかと、本気で思う。
みんながみんな、こんなこと言うなんて…あたしの声って…神の声?
女神?!エンジェル?!
…なんちゃって。
勝手に考えて恥ずかしくなった。
「だからさ、明日絶対見に来てよ?」
じゃないと慎也先輩に殺される、とマジな顔で言う柳沢先輩。
殺されるって…おいおいおい。
「はい…見には行きますよ」
変に強調して言ってみた。
「ん。それだけ」
先輩は満足そうに笑い、そのまま踵を返して行ってしまった。
うーん…演劇部には不思議な人が多いのだろうか?
そんな中に入る?
絶対嫌だと思った。