One STEP
あたしも琴子と並んで演劇部のみんなの背中を見つめ、楽しみだと思った。
これからこの先輩たちのステージが始まるんだ。
ドキドキと胸が高鳴る。
わくわくする。
まるでこれから冒険に行くみたいな感覚。
突如ポン、と、あたしの頭に乗せられた手。
「見てろよ?」
そう自信満々に言い、笑う藤田先輩。
どうしたらそんな自信満々に言えるんだろうな。
あたしにはきっと一生分からない。
「ちゃんと見ますよ」
あたしはフイと先輩から視線をずらす。
ポンポンと、優しく頭を叩かれた。
ステージへと向かう演劇部一同様。
あたしはその背中を、ただ無言で見つめていた。