真実の書

各務有香(かがみゆか)は大きく溜息をついた。

「どうした?」

有香の隣の席の菅野樹(すがのいつき)が訊いてくる。


「何でもない。部活が憂鬱なだけだよ」

有香はどこか淋しく笑った。


樹が有香の右手首を覗き込む。

「有香?この包帯・・・」

「?・・・あぁ、ちょっと怪我しちゃった」


有香は包帯の巻かれた右手首を樹に見せた。


本当は怪我などではないのだけれど・・・。
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