あの日の恋
「まあ…兄貴には会ったこと
ないんだけどね。」
「会いたくないの?」
「会ったら…憎みそうだから」
遠い目をして芳樹は
一瞬悲しい表情を見せた。
「そっか…。」
それ以上は何も触れず
いや…聞けなかった。
あんな顔をする芳樹を
見た事なくて、
何て言っていいかわからなかった。
そして第二中に着くまで
あまり会話もなく歩いた。
「あっ!」
その沈黙を破ったのは
通りかかった直樹だった。
「直樹さん!」
やっと会えた。
ずっとずっと気になってた
相手に会えてあたしは
今まで感じた事がない気持ちになった。
「どうしたの?こんなとこで。」
「直樹さんにお礼がしたくて」
「お礼なんていいよ。
当たり前のことしただけだし。」
直樹は優しく頭をポンポンと
撫でて微笑んだ。