《短編》切り取った世界
「いい加減気付けよ!
結局、兄貴は嘘つきなんだよ!」
『―――ッ!』
傷つけたいわけじゃないのに。
だけどもぉ、止めることなんて出来なかった。
歯を食いしばり、握り締めた拳に力を入れて。
「…それでも兄貴を待ちたいなら、勝手にしろよ。
邪魔なのは俺なんだから、俺が出て行けば良いんだろ?!」
叫んでそのまま、上着を持って部屋を出た。
兄貴のときは、すがりつくようにして止めたくせに。
なのに俺が何をしようと何を言おうと、美緒には届かないんだから。
期待した分傷ついて。
もぉ何度、こんなことを繰り返してきただろう。
いつものマフラーが、今日は首になくて。
余計に真冬の冷たい風を感じた。
虚しさばかりが俺を支配して。
この前まではバレンタンだの何だので賑わっていた街が、
いつの間にかいつもの落ち着きを取り戻していた。
焼き増しだと思っていた毎日が、確実に変化した瞬間。
学年で一番の成績になっても、バスケで地区大会を突破しても。
何一つ、兄貴を超えた気になれなかった。
中学に入ったところで、結局は兄貴の亡霊ばかりが憑き纏って。
いつもいつも、兄貴の周りには人が集まっていた。
兄貴と同じで“すごい”のが当たり前。
期待を裏切ろうものなら、口には出さないため息を吐き出されて。
結局俺は、“佐久間隆志の弟”でしかない。
押し付けられる型枠にはまったように演じて。
“本当の俺”がどんなものなのか、自分でもわからなくなってきて。
結局、兄貴は嘘つきなんだよ!」
『―――ッ!』
傷つけたいわけじゃないのに。
だけどもぉ、止めることなんて出来なかった。
歯を食いしばり、握り締めた拳に力を入れて。
「…それでも兄貴を待ちたいなら、勝手にしろよ。
邪魔なのは俺なんだから、俺が出て行けば良いんだろ?!」
叫んでそのまま、上着を持って部屋を出た。
兄貴のときは、すがりつくようにして止めたくせに。
なのに俺が何をしようと何を言おうと、美緒には届かないんだから。
期待した分傷ついて。
もぉ何度、こんなことを繰り返してきただろう。
いつものマフラーが、今日は首になくて。
余計に真冬の冷たい風を感じた。
虚しさばかりが俺を支配して。
この前まではバレンタンだの何だので賑わっていた街が、
いつの間にかいつもの落ち着きを取り戻していた。
焼き増しだと思っていた毎日が、確実に変化した瞬間。
学年で一番の成績になっても、バスケで地区大会を突破しても。
何一つ、兄貴を超えた気になれなかった。
中学に入ったところで、結局は兄貴の亡霊ばかりが憑き纏って。
いつもいつも、兄貴の周りには人が集まっていた。
兄貴と同じで“すごい”のが当たり前。
期待を裏切ろうものなら、口には出さないため息を吐き出されて。
結局俺は、“佐久間隆志の弟”でしかない。
押し付けられる型枠にはまったように演じて。
“本当の俺”がどんなものなのか、自分でもわからなくなってきて。