裂果
「カット! はいはいカットカット!」
講堂内に高い声が響き渡り、その場にいた全員の肩から力が抜けた。
「大道具どうしたの? ドラゴンどこ行った?」
「ごめん頭もげたー!」
取れたドラゴン頭部だけをぱくぱくさせながら、大道具係が舞台裏から顔を出す。
「もぐな! すぐ直して! じゃあついでにみんな休憩ね、十五分!」
彼女の声を合図に、クラスのほぼ全員がその場に崩れるように座り込んだ。
溜息の輪が辺りに広がっていく。
今は十月中旬、ちらほらと衣替え済みの生徒が増え始めた頃。
十一月に控えた学園祭では、高校二年生によるクラス対抗演劇コンテストが行われる。
そのために、ホームルームや放課後を使って練習をしている。
今日はこのクラスに講堂練習の順番が回ってきているのだ。