裂果
「じゃあさ、私がどうのこうのって言ってるけど、今だけそれ全部忘れてみてよ。何も考えないで」



新川は、不満そうではあるがそっと目を閉じた。

頭の中に浮かんでくる考えを、ひとつひとつ消そうとしているのだろう。

眉間に力が入って、きゅっとしわが寄ってしまっている。



天音は、新川の眉間を中指でそっと撫でた。

そうしたら、ふっと力が抜けたのか、新川の表情が少し和らいだ。

端正な顔を這う紋様を指でなぞり、そして頭を優しく撫でてみる。

新川は一瞬身じろいで、それからは大人しく、されるがままになっていた。



「ねえ。……切られて切られて閉じ込められて切られて、それでも独りでがんばってるの?」
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