裂果
「ねえ、答えて。新川くんは、どうしたいの」

「……俺は、」



きゅ、と新川の手に力がこもった。



「契約したい」



今にも泣き出しそうなほど切ない顔をしているのに、新川の声はとても強かった。

決して大きな声ではなかったけれど、まっすぐで、芯が通っていた。



これが新川の本当の気持ちだと、天音は感じた。

それならば、もう答えは一つ。



「いいよ。契約しよう」



新川はもう止める言葉も並べず、静かにうなずいた。

そして天音から携帯を受け取ると、慣れた手つきでボタンを押し、また天音に戻した。



受け取った携帯を耳に当てると、そこでタイミング良くコール音が途切れた。



『はい?』

「もしもし、鈴原です」

『ああはいはい。……決めました?』



「決めました。私、新川くんと契約します」
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