裂果
『へえ。良かったなあ……ああ、やり方はご存知ですか』
何もかもを今日初めて知った天音に、そんなことがわかるはずはない。
そこで新川に訊いてみたが、新川も知らないという。
肌に傷をつけて血の契約、なんて痛そうな契約だったらどうしよう、と天音は自分の想像に震えた。
『簡単ですよ。キスをすれば、それでいい』
聞いてしばらく、天音は言葉を呑み込めずにいた。
「えっ、それは口ですか、口なんですか」
『マウストゥマウスですが嫌なんです? こんなのお約束でしょう』
「お約束ですけど! 心の準備ってものが」
『できてないんですかね』
「できてます!」
覚悟はできている。
それでも心臓はどくどく脈打って、体の中はざわめいているのだ。
『それならもう、私は何も言いません。……透夜を、よろしくお願いします』
「はい」
天音が静かに答えると、間もなく通話が切れた。
何もかもを今日初めて知った天音に、そんなことがわかるはずはない。
そこで新川に訊いてみたが、新川も知らないという。
肌に傷をつけて血の契約、なんて痛そうな契約だったらどうしよう、と天音は自分の想像に震えた。
『簡単ですよ。キスをすれば、それでいい』
聞いてしばらく、天音は言葉を呑み込めずにいた。
「えっ、それは口ですか、口なんですか」
『マウストゥマウスですが嫌なんです? こんなのお約束でしょう』
「お約束ですけど! 心の準備ってものが」
『できてないんですかね』
「できてます!」
覚悟はできている。
それでも心臓はどくどく脈打って、体の中はざわめいているのだ。
『それならもう、私は何も言いません。……透夜を、よろしくお願いします』
「はい」
天音が静かに答えると、間もなく通話が切れた。