裂果
透夜はベッドの上でゆっくり寝がえりを打った。

それから上靴を器用に脱ぎ落として、横向きになると、静かに目を閉じて息をついた。

昨日に引き続き、透夜は今日もまた腹部に手を添えている。

そこが痛むのだろうか。



天音は隣のベッドにちょこんと腰かけた。

じっ、と透夜を見てみると、どうも透夜が息苦しそうにしていることに気づく。



「あれ、もしかして透夜も熱……?」

「……お前もか」

「私がうつした? うつされた?」

「いや、違う」



透夜はそう言いながら、気だるそうに腕時計をはめた。

腕時計のベルトの下から、赤黒い刻印が覗いている。



「簡単に言えば情報の書き換えだ。……竜也さんが、そう言ってた」



竜也氏といったら、確か契約した時の電話の相手だ――天音はおぼろげに思い出す。

透夜の責任者だということは、「悪魔」関係に詳しいのだろうか。

とにかく透夜の言葉を聞きもらすまいと、天音は続きを待った。



「体が変わるらしい。俺は天音に反応する、というか……天音がいれば強くなれる体?」

「……大丈夫?」



伝えようとしていることは理解できたが、どうやら透夜はちょっとした混乱状態に陥っているらしい。

熱のせいか、と透夜の額に手を当ててみた。



――熱い。
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