裂果
「ちょっ待って、すごく熱いんだけど。何度あるの?」



微熱の天音にも感じられるほど、手のひらの下の額は熱かった。



「さんじゅう……く?」

「え!? 三十九って……なんで学校来たの?」

「今、単位落としそうで。ギリギリで」



単位より体を大切にしなさい、とありきたりなことを言おうとした。

でも、ギリギリだと訴える透夜は、本気で切羽詰まった目をしている。

言えなかった。

簡単に言えるものなどではなかった。



「天音、一時間目、何?」

「出るの? 音楽だけど、大丈夫なの?」

「単位が」



呼吸は苦しそうだし、表情もぼんやりしていて、とても授業に出られる状態ではない。

それでも透夜は体を起こそうとしている。



天音は透夜の背中に手を添えて、力を貸した。



「そんなにギリギリなの?」

「一学期に休みすぎた。……もうほとんど後がない」



特に意識していなかったためおぼろげにしか思い出せないが、確かに透夜は、一学期の出席率があまりよろしくなかった。

皆関心も持たずに、透夜がいなくてもそれが普通という空気の中で過ごしていた。

サボりだろう、という声もあった。

でもそれは違う、と天音は思う。



だって透夜は、こんなにふらふらでも無理やり授業に出ようとしているのだから。
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