不器用な恋
*由月side*
エレベーターから降りると、さっきまで普通に廊下で話していた男や女がアタシを驚いた顔で見ていた。
『由月先輩、いつもよりかわいくね?』
『あぁ。なんか、優しそうなオーラみたいな。』
『でも、怪我してるし、傷だらけだな。』
『ケンカじゃね?美人なのに勿体ねぇよな。』
後輩の男子二人組の会話がハッキリと聞こえた。
『由月先輩、マジ美形。』
『何しても様になるよね……』
『でも、誰に対しても冷たいよね。』
『クールビューティーってやつ?』
『それそれ!なんかカッコイイし!』
『ねぇ、由月先輩の後ろにいるの、由希かな?理央かな?』
『あれは理央でしょ。』
少し派手目なギャル二人の会話まで聞こえる。
後ろ?理央?
『由月先輩!!』
後ろから、はじめて聞く声がした。
振り返ると、アタシより少し小さいかわいい顔した女が立っていた。
たぶん高1で後輩。
綺麗に巻いてある茶色のセミロングの髪。
大きくて綺麗な二重の瞳。
白いカーディガンを着ていて、袖を伸ばして、手がスッポリ隠れている。
『由月先輩、あの………風間くんと付き合ってるんですか?』
アタシは声が出せないため、ずっと黙っていた。
『あの………?』
アタシは鞄からメモ帳とペンを取り出した。
“ 悪いけど、声出せないから ”