不器用な恋
アタシはそのまま裏庭に出た。
誰もいなくて、静まり返えっている。
花壇の花は綺麗に咲き誇っている。
そんな花を見ながら、自然と口から、ある言葉がこぼれた。
『…なにもできないのに…自分の無力さに気づいたのに…弱い自分が嫌いだったのに…どうして君は…』
『…こんな私のこと……好きになったの…………』
涙が溢れた。
優貴に近づき過ぎればきっと、自分が傷つくことになる。
アタシは優貴への気持ちを心の奥に押し込めた。
少し気が楽になった気がした。
涙を急いで拭いて、教室に戻った。
ガラッ
教室のドアを開けると、視線が一斉にアタシに集まる。
優貴はさっきの女達に囲まれている。
その中には赤崎もいた。
ゆっくりと席につく。
本を開く。
優貴はアタシに気づくなり、すぐに机に寄ってきた。
『由月、カラオケ、行きたくないの?』
無邪気な笑顔だった。
『行く必要がない。』
と冷たく、優貴のことを見ずに本に目を落とす。
『由月、怒ってるの?俺、なんかした?』
真剣な視線を向けられているのを感じた。
『怒ってなんかない。』
ひたすら本を見続けた。
『ねぇ…』
と言いかけた優貴はアタシから本を取り上げる。
『何怒ってんだよ!』
優貴は少し声を荒げた。
『怒ってない。さっき言ったじゃん。本、返して。』
アタシは優貴の手から本をとる。
そのまま、本を鞄に入れ、教室のドアに向かう。
『待てよ、俺なんかした?』
後ろから、優貴に腕を掴まれた。
『なにもしてないよ。別に。』
と言いながら、優貴の手を振り払う。
早足で廊下に出る。
コツ、コツ、コツ、コツ
足音が廊下に響いた。