不器用な恋
〜♪♪


携帯の着信音。


ディスプレイには唯という文字が。


唯とは、同じ学校の親友だ。

サバサバした性格で、ケンカも強い男勝りな女の子だ。

アタシに似ているところがあって、一緒にいると楽なやつ。

急いで電話に出る。


『はい。唯、どうしたの?』


「ハァ、ハァ…由月?今どこ?」


『唯?どうしたの?なんかあったの?』


「成学の奴らが………」


成学。。。


成蘭学園という、女子校だ。


中学の時から、張り合ってる奴らだ。


『唯?今どこ?すぐ行くから!』



「空き地。。。プツ……」

電話が切れた。


空き地?

あっ!


アタシは急いで鞄を持ち、バーを出ようとすると、夕姫奈が扉から出てきた。



『由月?どうしたの?』


夕姫奈はびっくりした様子でアタシを見る。

『唯が成学の奴らに。。。』


『唯が?』


夕姫奈は真剣な眼差しでアタシを見る。


『あの空き地にいるみたい。』



『由月、早くいこう!』

夕姫奈はアタシの腕を掴み、大理石の廊下を全速力で走り出した。





渋谷の街を風のように走り抜ける。


だんだん、街並みが住宅地に変わってゆく。


海辺の近くの空き地に着くと、唯が一人で何十人も相手している。


唯はフラフラしていて、立つこともままならない様子だった。


『唯!』

アタシと夕姫奈は唯のもとへ走る。



『あらあら、由月さんに夕姫奈さんじゃないですか。来るの遅かったですね。舎弟さん、ボロボロにしちゃいましたよ?』

笑いながら、近づいてくる。
成学のアタマ、戸崎夏海だ。


『アタマの2人が来てくれるなんて、豪勢だね。』

夏海の横にいる、月島世菜が偉そうに笑う。


『お前らさ、なんで、唯、一人を相手にこんな大勢でケンカしてるんだよ?』

夕姫奈は鼻で笑っている。


『最近のガキはケンカのやり方も知らねぇのか?』

アタシは笑いながら言う。



『じゃあ、由月さんと夕姫奈さん、相手してくださいよ?おい!お前ら、相手、してやんな?』

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