不器用な恋
『由月!唯!』
後ろから男の声がした。
『あ、竜じゃん!』
アタシは笑顔で返す。
彼は佐々木竜。
Shieruで出逢った、いわゆる優男だ。
ギタリストを目指してる。
イケメン、、、らしい。
『久しぶりだな。夕姫奈はいないんだ。てか、、、』
竜はアタシたちの顔の傷やアザを見て、不安そうな顔をする。
『あー、竜、そんな顔しないでよ。ケンカ、ケンカ。』
『由月、ケンカとか、もうやめろよ。』
竜は口の傷を指でなぞる。
『痛っ!』
アタシは口をおさえる。
『あっ、わりぃ。』
竜は焦った顔で精一杯笑っている。
『由月、アタシ、帰ろっかな。』
唯は早々と階段を上っていった。
『え、ちょ、ちょっと!ゆ、唯!待ってよ!』
アタシは唯を追いかけようと走り出そうとした。
後ろから、誰かに腕を掴まれる。
振り返ると、竜が真剣な顔でアタシを見ていた。
『由月は…………居ろよ。。。』
『は?竜?どうしたの?』
『いいかげん、気づけよ。俺、お前のこと、好きなんだけど。』
サァーと竜の顔が赤らんでいく。
『竜、アタシ、この関係壊したくない。友達でいたい。もう恋愛なんてしたくないから。』
『俺、友達には戻れない。』
『そっか……………。じゃあ、ばいばい。』
アタシは大音量の音楽の中、走り抜けた。