不器用な恋
愛斗が立っていた。
『愛斗?どうしたの?』
『由月先輩のこと、迎えにきました。』
『え………』
アタシは愛斗に近寄り、手を握る。
『冷たっ………愛斗、どれくらい待った?ごめんね。』
秋風が冷たい、こんな季節にどれくらい待ったのだろう。
『由月先輩のためなら、どうってことないよ?それより、なんか急いでたみたいだけど?』
『あ………別に。大丈夫。愛斗、行こっか。』
愛斗はアタシの手に指を絡める。
『由月先輩、なんか優しいね。冷たい由月先輩の方が好きだけど?』
『愛斗、アタシやっぱり………んっ………』
愛斗はアタシの言葉を遮るようにキスをした。
『んんっ………愛斗?』
『由月先輩、俺をフるつもり?』
『ごめん。なんでもない。』
アタシは愛斗の手を引き、歩き出した。
〜〜♪♪
アタシはスカートのポケットからケータイを取り出す。
ディスプレイには夏樹の文字。
『はい。夏樹、どうしたの?』
「ゆづきちゃん、今日、また会えないかな。」
『え?』
「僕、ゆづきちゃんのこと、好きになっちゃったかも。」
『夏樹?』
「ダメかな?」
『今日はダメかも。また電話して?』
「うん。ゆづきちゃんが僕のこと、夏樹って呼び捨てにしてくれたとき、嬉しかった。」
『アタシも呼び捨てでいいよ?夏樹。じゃあまたね?』
「またね、由月。」
ケータイをしまう。
『今の、男?』
愛斗は寂しげに言う。
『うん。昨日ナンパされて………それで…みたいな。』
『それで?』
『いや、なにもしてないよ?』
『由月先輩は俺以外、見ちゃダメ。』
『え?』
『俺のものなんだから。』
愛斗はアタシを抱きしめた。