不器用な恋
病院の受付の人は焦っている春樹と俺を見てビックリしている。
『姫城由月は!?』
『姫城由月さん………………………………………………………あ、その患者さんは集中治療室です。面会は無理ですが、御親族の方ならば、窓越しに見ることなら可能です。御親族の方でいらっしゃいますか?』
『いや……彼氏っつーか。』
『ICU、集中治療室の場所は三階です。』
受付の人は俺の様子を見て、何となく感じ取ったのか、俺に微笑んだ。
『優貴、行ってこいよ。』
春樹は俺に笑いかける。
『あぁ。あ、どうも。』
受付の人に一礼して、俺は走って、ICUに向かった。
ICUの前にはブレザーを着た、長い茶髪の女の子が立っていた。
女の子は俺に気づいたのか、ゆっくりと振り返った。
『由月の彼氏さんですか?』
微笑んだ女の子の笑顔は由月によく似ていた。
『まぁ、そんな感じです。』
『へぇ、お姉ちゃんに…彼氏。』
『お姉ちゃん?』
『あっ!自己紹介してなかったね。姫城七世です。』
よく見ると由月にどことなく似ていた。
長く巻かれた茶髪の髪をストレートにすれば、由月に見えなくもない。
『由月に妹いたんだ。』
『アタシ、ほとんど家帰らないから。バンド組んでて、クラブに入り浸ってんの。』
『そうなんだ。』
『お姉ちゃん、ケンカして、腹蹴られたらしくて、そのまま、コンテナみたいなのにぶつかったみたい。そのあと、上から鉄骨とか鉄パイプが落ちてきて、下敷きになったみたい。』
『誰から聞いたの?』
『アタシ、見てたの。なのに、なにも言わないで逃げてきた。』