ありがとう
第1章
何かが顔を焦がす。
あまりの熱さに飛び起きると、遮られることなく天からの光が彼の顔目掛けて降り注いでいた。
両手の平で額から頬を経由して通り抜け顎までを撫で付けると、熱は何処かに散って行った。
数秒ほど停止していたが状況の把握は早かった。
慌てて左の袖を捲ると、時計の短針は北西辺りを指している。
「まずい!」
家を出てから初めて発した言葉だった。