ありがとう
最終的にヒゲは、路上に雑誌や本や雑貨を広げて格安で売り始めた。
僕は疑いの目で見ていたが、剽軽なヒゲのトークが良いのもあるのか、予想外に売れていた。
例え発売されたばかりでも、雑誌なら読み終えれば捨ててしまう。ヒゲはその需要を把握し、尚且つその雑誌を読むであろう年齢層に的確にアピールしていた。
僕は何故か、小学3年生のときに父親としたキャッチボールのことを思い出していた。
そこから母親の顔、兄の顔が浮かんだ。
それらは容易に思い出せた。
胸が酷く苦しくなった。