ありがとう

夕方には回転寿司で残り物を見事に手に入れ、足らない物はコンビニで普通に買い物をしていた。
客や店員は隠し通せない嫌悪感を顔に表しながらじろじろ見ていたが、ヒゲはそれらには無関心だった。

それどころか、成人雑誌コーナーを指差しながら、「お兄さんにはあれも必要かな!?」と冗談を言いながら1人でゲラゲラ笑っていた。
だが僕が一番驚いたのは、お釣りを渡されたときだった。
必死で手に入れたその金を、何の迷いもなく被災地の募金箱へ滑り込ませたのだ。

僕はそのとき、居させてくれるだけヒゲのそばにいようと決めた。
< 231 / 244 >

この作品をシェア

pagetop