ありがとう

ただでさえ山に囲まれた住宅地から更に深く入っていくようだった。

コンクリートで舗装されていたものの車が通れないほど細く急な上り坂で、山から落ちてくる砂利が覆い被さり一昔前の道を連想させた。

ところどころ苔が生え、滲み出てくる雨水でひんやりとしていた。

真っ暗だと言うのに蝉達はひたすらに騒音を撒き散らしていた。
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