アイシング、マイラブソング
「一ノ谷は元気?悠くん仲良かったし、同じ高校でしょ?」


僕の心の内なんか知る由もなく、
美和がじゃんじゃん話題をふってくる。

この子が間にいて助かった。


そもそも、
始めに会ったのが千架だったら僕はどうしていただろうか…。



「祥か。アイツは相変わらずだよ」


「悠くんも変わってないよ~。ね、千架」



「うん。相変わらずで」



なんだか、

自分のことを覚えていてくれたことすら喜ばしかった。




どき どき




―今日はどうもうるさいなぁ…




意思の無いはずの心臓にムダに語りかけていた。


《まもなく快速電車がまいります。白線の内側でお待ちください―》



僕の最寄り駅は各駅停車の普通しか止まらない。



―また見送りか…



でも良かった。



せっかくお上から女神様が降臨なさったのだ。

ついでみたいで悪いが、懐かしの美和にも会えたし。

もう二度とこんな機会は巡って来ないかもしれない。


―少しでも多く藤堂と話がしたい


緊張して喋れないくせに、
欲だけはしっかり持っていた。
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