アイシング、マイラブソング

プアン




列車が警笛を鳴らしながら勢い良くホームに飛び込んできた。


同時に、美和が慌ただしく動き始めた。




「あたし、コレ乗るね!」



― ん ?




僕は一瞬にして凍りついた。


「二人は同じ駅でしょ?あたしの駅はその次の駅だし、快速止まるから!普通電車しかないって不便だねぇ」


確かに、

さっきも述べたとおり
僕らの最寄り駅は各駅停車しか止まらない。


美和がこんな風に冗談まじりのイヤミを言っても、ツッコむ余裕なんかなかった。



―美和がここで帰る?


―ってことは、え~と?


「悠くん、千架をちゃぁんと送ってよ!」



「う?!」



なんか頭だけでなく
体まで白くなった気分だった。


何を考える間もなく

電車の扉がプシューと開き、

ガコンと閉まった。


すでにガラス越しの美和がひらひらと手を振っている。


千架も
「ばいばーい」
なんて言って、いたって普通。


―どうしよどうしよ!


完全に僕だけが舞い上がっていた。
< 11 / 271 >

この作品をシェア

pagetop