アイシング、マイラブソング
決意を固め呼び止めると、

千架はいつもの笑顔で振り返った。


「なぁに?」


自転車のスタンドを立てて置き捨て、

月に照らされる神秘的な彼女に一歩手前まで歩み寄った。


「悠どうしたの、いきなり…」


あまりの近距離に戸惑ってるみたいだ。



どくん

どくん


―もう、勢いだ




「キス…していい?」




「えっ」




聞いておきながら僕は


答えを言われる前に千架の首筋から耳のうしろにかけるところへ右手をやっていて


顔を軽く上向きにしてあげたら


もう止まれなくて



自分の唇を



彼女の唇へと近づけた。



そして


ほんとに一瞬


千架が嫌がって顔を引いていないか


確認したんだけど、



彼女の目が「おいで」と言って受け入れてくれたから




ついに、できた。




ファーストキス。




僕らはまるで静止画のように、

10秒くらいそのままでいた。
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