アイシング、マイラブソング
【1―2】「またね」
ガタン ゴトン
いつもなら耳に入らない列車の音。
やけに脳を刺激する。
―こんな日に限って…!
少し帰りが遅くなったせいか、
いつもより車内は混み合っていた。
目の前には千架のこうべ。
さっきよりも確実に近い距離に戸惑った。
彼女はうつむき加減でなにやらケータイをいじっている。
僕はその姿を見おろしながら
すべてに見入った。
やわらかそうなダークブラウンの髪、
薄ピンクの爪、
メールを打つ軽やかな指先、
くるんとした長いまつげ、
どきどきした。
「三上っ」
「ハイッ!?」
メールが終わったのかケータイを閉じ、千架が急に面をあげたのでちょっと後ろへのけぞった。