アイシング、マイラブソング
走り始めて10分もしないうちに千架を見つけた。


千架は見通しのいい歩道脇のベンチに居た。

じーっと空を仰ぎ、マネキンのように生気がない。


泣いているのか、
怒っているのか、

遠目からは分からないが僕の予想はこのふたつ。


いずれにしても、彼女に話しかけなければ何も始まらない。

ゆっくりと歩み寄り、3メートル手前から呼びかけた。

精一杯、優しい声で。



「千架…?」



はっとしたように振り向いた彼女の真っ赤な目から、涙があふれていた。


「悠…さびしかった…!」



僕の予想『泣いている』は当たり。

ただ、理由が異なった。

悔しくて、僕に呆れて泣いているのだと思っていたのだが…
< 164 / 271 >

この作品をシェア

pagetop