アイシング、マイラブソング
話題がなくなり、無言が続いた。




ガタン ガタン




電車は確かに走っている。

時は止まっていない。

流れているのだ。

無駄にはできない。



―何かネタでもないかなぁ…



なんて

必死に考えていた時だった。




キキキーッ




「ぅおっ?」




列車が急カーブに差し掛かり、

車内が思いのほか傾いた。




ドン


「 あ」




千架が体勢を崩し

彼女の右肩が僕の左胸に当たったので

とっさに彼女の背中を支えた。




手の平の向こう、

千架の感触…



温かくて柔らかい。




どくどくどくどくどく




心臓がかつてないほど高速で波打つ。



今こそ時が止まったように、

僕たちは彫刻のごとく固まっていた。
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