アイシング、マイラブソング

【5―3】嘘のウソ

年が明け、

2月にもなると
学校は「進路」というもので慌ただしくなった。

さっそく第1回の進路希望調査用紙が配られたところ。


大学へ行く気が無いから工業へ来たわけで、



―卒業したらきっと働くんだろな



なんてぼんやり考えていた。



そして



―千架はどうするんだろ



ふと疑問に思った。


―歌が好きだから音大かな


―歌手?


―でもそしたら


どくん


嫌なことが思い浮かんだ。



CDデビューなんかしたら

有名になって
発表会の時みたいに遠い人になってしまう気がした。



―でもそうカンタンにはプロになれないだろうし


―…って千架に失礼か


―応援してるからこそ、有名になることを危惧してしまう…



自分の進路のことより千架のことの方が気になった。
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