アイシング、マイラブソング
その日の帰り、


「まだあんまり考えてなくて」


進路について
千架は言った。



「うちの学校はそういう調査はまだだよ!そっち早いね」


千架は笑顔で言った。



「悠は働くの?あたしは音大でも行けたらいいなって思ってるんだ!」


千架は大袈裟な笑顔で言った―。



なんとなく

予感がしてる。



歌に身を入れるんじゃないかって。


僕は

すてられるんじゃないかって。


だいぶ悲しい顔をしていたらしい。



「何かイヤなことでもあった?」



千架が心配そうに顔を覗き込んできた。



「なぁんにも」


「なんでも言ってね」


―それ、俺のセリフ



なんて、
気持ちひがみながらも

もう少し千架を信じることにした。



今こうして
一緒にいてくれてることは現実だから。


「千架、帰ろっ」


彼女の手をひいて
僕は大袈裟に笑った。
< 176 / 271 >

この作品をシェア

pagetop