アイシング、マイラブソング
「…ごめんねっ」



ようやく千架が動いて
僕から離れた。

ようやく と言っても、
ものの数秒だったろう。


だが僕には1分…10分にも思えた。



あれ以上くっついていたら

僕は理性を失ったろうか―。



胸は高鳴ったまま、地元の駅についた。


気まずい空気を引きずってか

二人して無言のまま、

千架が先にホームに降り立った。


後に続いた僕は

ふわりと浮いた彼女のフローラルの残り香に脳をやられかけた。



「あれ?入らな…いっ?」



その証拠に、

改札に着くと定期券とテレカを間違って通していた。
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