アイシング、マイラブソング


「は?」



いきなりな展開に

訳が分からず

すぐさま聞き返した。





「悠と、別れたい」





千架は涙を浮かべて

唇を噛んでいる。



本心じゃないことはすぐに分かった。



「まず、何でなのか教えて?」



「あたし…歌に専念する」



「それで、俺が居たらダメなわけ?」



「あたしは夢を取る。来年卒業したら上京する」



「だから何?関係ないよ」



「レッスンもこれからほぼ毎日になる。悠には会えないしメールとかする暇はない。」



「だからって…」





「夢のために…
 
 邪魔になってしまった…」





心臓をえぐられるような言葉だった。





「ジャマ…?俺が…」



「っ…ごめんね…」



千架の頬にこらえていたであろう涙が伝う。



「…ひでぇな、千架」



ボロボロと、とめどなく。



「悠、ごめんなさい…」



それを拭いもせず、

泣きじゃくる千架を置き去りにして

逃げるように走り出した。



「ゆーう!」



彼女の呼ぶ声にも振り返らずに。

この時ばかりは、

憎かったから。
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