アイシング、マイラブソング
駅に着くと

千架はもう居なかった。

ぽつんと
僕の自転車だけがさみしそうに佇んでいた。


その場で僕はメールを打った。



[逃げ出したりしてごめん。千架が別れたいなら受け入れる。今までありがとう。さよ]


「…っ」



『さよなら』なんて、

嘘でも言いたくなかったから
それ以上打てなかった。

多分
心のどこかで期待してるんだ。


千架がよりを戻そうとしてくれると。



―あ~、もう!



僕は涙をこぼしてた。



物心ついてからは初めてのことだった。


親に怒られたって
転んだって
飼っていた犬が死んだときだって
泣かなかった自分が…


人生初の失恋で。


ほろ苦いとか
甘酸っぱいとか
そんな生易しいもんじゃない。


苦しくて
悲しくて
苦しすぎて
息が詰まりそうだ…。



―情けない!



気合いを入れ直して、
メールの続きを作った。



[今までありがとう。夢に向かう千架を誰よりも応援しています。]
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