アイシング、マイラブソング
パティーはいつにも増して人混みに溢れていた。


「三上くん、今日はキレないでね」


先輩が雪だるまの頭をかぶりながら言った。


「がんばります!」


僕も気合いを入れてサンタになった。



午前は2時間かけて1階フロアを練り歩く。

従業員通用口を出るとあっという間に人だかりができた。


「あっママ、サンタしゃん!」

「雪だるまだ!」

「プレゼントくださ~い!」


半ばもみくちゃにされながら、
愛嬌を振りまいてサービスした。



午前は無事終了し、
午後は2階フロアへ。

1時間が経ち、


―あと1時間!


と最後の踏ん張りを見せ、子供服専門店の前あたりで足を止めた。


「サンタさん、だっこ!」

「サンタさんこっちも来て!」


子供のギャーギャー声の嵐。

もしかしたら人生一のモテ期かも、なんてくだらないことを思うくらい忙しかった。



そんな時だった。

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