アイシング、マイラブソング
子供たちが雪だるまに興味を移したのを見計らって、千架が目の前にきた。


「千架、こんなの中身オッサンとかだよ?」


「美和は夢がないなぁ」


サンタに興味の無い美和は少し遠巻きに見ているらしく、

着ぐるみからの狭い視界は、

千架だけを捉えている。




「握手してくださぁい」




彼女にねだられ

僕は手を差し出す。



白い薄手の手袋ごしに、

千架の懐かしい温もり。



こんな形で再び触れることになるなんて

予想だにしなかった。





―あれ?




千架は手を離さない。




―ちょ、ちょっと…




だんだん動揺してきた。




「サンタさん…あたしプレゼントが欲しい…」




―千架…?




「好きな人に、会いたい…」



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