アイシング、マイラブソング
「… ! 」



千架の手がゆっくりと、

そしてごく自然に僕の手に伸びた。





―千架…





かろうじて動揺はしなかった。


覚悟の効果はてき面だ。



繋がれた手を黙って受け入れ、

まだまだ続く川沿いの道を二人して無言で歩き続けた。



話さずとも、

手のひらから千架の気持ちが伝わってきた。



不安や孤独感を忘れたくて、

しがみつくように強く

僕の手を握ってくる。




―いつもの前向きさで良いことばっかり考えてればいい。自分は成功するんだ、って。思い描いて。




口に出すと、うさんくさくなりそうだったから、

僕もぎゅっと握り返した。
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