アイシング、マイラブソング
着いてすぐ買った切符を通し、改札を抜けてゆく千架の背。


キャリーバッグのゴロゴロが耳に響く。


改札からすぐの広い階段を一歩一歩踏みしめるように上ってる。


改札の天井が頭から順々に千架の姿を消してゆく。


背も消え、

腰も消え、

足も消え…

かかとだけになると

次の一歩でついに千架はいなくなった。



「…………」



喪失感が僕を包む。


体がものすごくふわっとする。


空気になったみたい。


自分が今、この世にいないみたい。


千架がいない世界は、
僕も存在できない世界…

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