アイシング、マイラブソング


「さよなら、千架…」





ようやく口に出せた。


この言葉がきちんと出た。


もう後悔はない。




千架は口の動きで分かったようで、向こうも

『さ よ な ら』

と口パクで言った。




電車が動き出す。


僕は立ち尽くしたまま、手も振らずに見送った。


千架を乗せた電車がカーブで見えなくなるまで、

じっと、じっと見送った。
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