アイシング、マイラブソング
『メールする宣言』から約半月が経ったある初夏の日。



僕は祥と電車の帰り道にいた。


望んでもいないのに、
駅のホームでたまたま会ったから一緒にいる。


―どうせなら藤堂に会わせてください
なんて神に願ったりした。


車内の扉に寄りかかり、各々の時間を過ごす。


祥は携帯ゲーム機でRPGをやっている。


ゲームをしている時のヤツには話し掛けてはいけない。

気が散って失敗しようものなら逆ギレしてくる。

それを解っているから黙っていた。

無言が続いても平気な仲だから問題はない。


とりあえずヒマなので車窓から外を眺めた。



ちょうど日暮れ時。



辺りは薄暗く、

まるで僕の心の色みたいだった。


千架に会えない、

メールができない、

ここ数日のグレーな心―



結局、僕は気が小さくてメールなんか送れていなかった。


返ってこないことが
こわくて。


勢いとか、
流れとか成り行きとか、
何かキッカケがあればいいのだが…。
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