アイシング、マイラブソング
懸賞好きなオカン宛てに映画の試写会の当選案内が送られていた。




―珍しく当たったんだ…



その映画は公開前から話題の恋愛邦画。

CMも飽きるほど流れている。




「『アイビームーン』ね…“大切な人と見てください”…」




瞬間、ピピッときた。




「これだ!」




僕はさっそく祥の作戦を頂いて、
玄関先で千架宛てのメールを打ち始めた。



だが

簡単には出来なかった。


―『行こう』…
―『行かない?』
―『行きませんか?』
―何がいいかな…」


微妙なニュアンスにもこだわって、

試行錯誤の末の30分後、

記念すべき初メールは完成した。



[おひさしぶり!突然ですが『アイビームーン』の試写会券があるんだけど、祥とか予定が合わなくて。藤堂は来週の土曜日空いてないかな。良かったら行きませんか?]
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