アイシング、マイラブソング
これから向かう試写会場は電車で7駅目のところにある。

僕らの街はいわゆるベッドタウン。

遊ぶとなればたいてい電車で都心に出る。


この日、
駅で待ち合わせたのはそういうわけで。

何にせよ僕はこうして千架と隣同士いられることが嬉しかった。


並んでホームまで歩く。



「三上、今日は間違えないね」


「ん?」


「定期とテレカ!」


「あぁ!ははは…」



―うひゃ…ドジなトコしっかり覚えてる!

―今日でなんとか挽回しなくては…



そう思いながら
デート開始3分、
ここまでは、醜態をさらすことなく無事にホームまでたどり着いた…。


―まだ3分かよ…体もつかなぁ…



「ねえ、あの映画の歌イイよね」



僕の心労をよそに、

千架が軽やかに歌い出す。

これから見る映画の主題歌。


タイトルは知らないけれど、その優しいメロディーと千架の澄んだ声は見事にマッチした。


僕をシアワセな気分にして、

電車が来るまでの退屈な時間を埋めてくれた。
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