アイシング、マイラブソング
美和と話し込んでいると

まるで中学時代の教室にいるような感覚がやってきた。



僕らは彼女の言ったとおり、
中学を卒業してから3ヶ月が経っていた。


自分はちょっと大人ぶって電車で通える工業高校を選んだのだが、

毎日スーツの大人たちと満員電車でおしくらまんじゅうするうち、



―いつかは自分も何十年とこうする日がくるんだろう



と憂いを感じるようになっていた。



だから、

ついもの悲しくなるこの場所で

何十・何百分の一の確率で馴染みの顔に会えたこと、

それは
小さな孤独と憂鬱から救われた気分になる。



「悠くん部活やってる?」

「またサッカー」

「へえ!あたし演劇部なんだぁ♪学校トナリだし文化祭来てよ」

「おう!」



美和と他愛もない話をしていると、

僕が待っていた18時38分の普通電車はあっけなく行ってしまった。


いつもなら早く帰りたくて待ちくたびれるけれど。


誰かといれば時間なんて埋まるものだ。
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