アイシング、マイラブソング
どく どく どく



また心臓の鼓動が速い。



―こんなに近かった?…



映画館のイス。

左隣に座る千架は目を輝かせながらまだ白いスクリーンを見据えていた。


そんな彼女に、
声を掛けずにはいられなかった。



「楽しみだね」


「うん!」



その愛らしい笑顔に、

女みたいだけど

きゅ~ん てなった。


直後、その余韻に浸っていた時、
映画出演者の舞台挨拶みたいなのが始まった。



―助かった。



顔がめちゃくちゃ熱い。
たぶんすごく赤い。



―こんな顔見られたらヤバイ…



舞台挨拶そっちのけで、手で顔をあおいだりして赤面をごまかした。



火照る顔が冷める頃、
あたりが暗くなりブザーが鳴った。

映画のはじまり。

一斉に静まる会場。

あの瞬間特有の、ごそごそする音が響く雰囲気が流れる。


スクリーンがまぶしくタイトルを映し出した。


僕はそんなときも
ちらっと横を見てしまっていた。


千架の瞳も一層輝いていて


つい吸い込まれそうになった。
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