アイシング、マイラブソング
「さっ、どうする?」



千架があまりに自然に聞くので、言葉を失ってしまった。

正直、映画の後のことなんか考えていなかった。

そんな余裕は誘ったときからなかったのだ。



「せっかく電車で来たんだし、遊ばないと!」


「そ…そうだよね」


「すぐそこのクレープ屋寄っていい?」


「もちろん」


「三上はいつもどこで遊ぶの?」


「えっと…
 ゲーセンとか…

 …ゲーセンかな?」



―しまった!



言ってから気がついた。

考えが巡り巡って同じものを2回言ってしまった。



「はは!三上おもしろいね!」


―また抜けてるとこバレちゃったな…



僕には格好つけるとか似合わないことが分かった。


「よし、ゲーセン行くぞ!俺UFOキャッチャーマジうまいから」


「あ、じゃあぬいぐるみ取って!」


「まかせなさい」



開き直ると案外上手くいった。



千架が好きかどうか…

とりあえずはどうでも良くなった。



―こうして一緒にいたい


その気持ちだけが

この時の僕の本当の気持ちだった。
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