アイシング、マイラブソング
また衝撃をおぼえた。


千架への想いに対して核心に触れ、そして『気付いた』自分に。


走っている時で良かった。

もし電車の中だったりしたら、
頭をかいたり
赤くなったり
まともでいられそうにない。



グラウンドを8周走った頃、
夕立のようないやらしく黒い雲が雨をぽつぽつと連れてきた。

12周目に差し掛かった時にどしゃ降りになった。


部活は一時中断されたが、
止む気配がないので解散となった。


僕はさっと着替えを済ませ、
いの一番に学校を出た。

傘はなかったから、
駅までダッシュ。


モヤモヤする心を晴らすため、
雨に打たれたかった。

ぱしゃぱしゃと水たまりも気にせず走る。


そんな雨も駅に着く頃には小雨になり、
あまりにベタベタな僕は雨やどりしていた人たちの好奇の目にさらされた。


―こんなもんだよな…


ツイてないときはとことんツイてない。

人間の運ってそういう風にできている。


僕はのろのろとホームまで歩いた。

雨水のせいか体が重い。
階段を登るのがタルイ。



「三上?」



階段の真ん中の踊り場まで来たところで、またしても千架の声の幻聴がした。



―俺、重症だな



念のため、やる気なく振り返ってみると。
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