アイシング、マイラブソング
「ホンモノ!!!」
僕は思わず叫んだ。
今度こそ声の主だった千架は目を丸くしていた。
「本物、って?」
「あ~、何でもない!」
「てゆうか、三上めっちゃ濡れてる!」
千架がけたけた笑っている。
僕はこの日一日の不運が無かったかのように良い気分になった。
それだけでなく、
運は上向いているような気さえした。
「はい、これ使って」
じ~ん
感動で目がうるうるしそうだ。
千架がフェイスタオルを貸してくれた。
(当たり前だろうけど)駅前にいた人たちは見るだけ見ておいてタオルの一枚もなかったのに!
「藤堂…なんて優しい子…ありがとう!」
「そ、そんなに感動した?こっちこそ、そんなのでごめんね?」
千架を引かせていることにも気づかず、僕はただただ喜びに浸った。