アイシング、マイラブソング
「悠くん、さっきの電車乗らなくて良かった?」

「うん。この後べつに用事ないし」


美和が気を遣って聞いてくれたので、好意に笑顔で答えた。

一応、
次は何分に電車が来るかと立て看板風の時刻表に目をやった。





どくん





僕は息をのんだ。




時刻表の後ろから、

とりわけ気になる人影が現れた。



美和と同じ制服を着た女の子―



人の群れをかき分けるように、

駆け足でやってくる。




僕が思うより速い。




直感的に

こっちへ来る

と感じた。



僕の目を惹きつけた彼女の雰囲気には、肌に覚えがあったからだ。



その曖昧な印象は、

即座に彼女の名前を呼び起こす。





「藤堂 …」



< 5 / 271 >

この作品をシェア

pagetop