アイシング、マイラブソング
『三上…』


「どうしたの?ちょっとびっくりしちゃった」


『ごめん…』


「いや、全然いいんだけど、何?」


『今…いい?』


「うん」



受話口の千架は心なしか元気がない。


―悩みでもあるのかな


と、話を聞く態勢になった。




『今から会えないかな』



どっきん!



思いがけない一言だった。


そんなの、

「だ、大丈夫だけど!」

しか言えない。



『えっと…駅前のロータリーのとこ…来れるかな』


「今からね?すぐ行く!」


『ありがとう…じゃあまた後で』



ツーツーツー



僕は通話オフのボタンを押すことすらもったいなくて、

切れた音を余韻にして浸っていた。



―藤堂から電話…

―しかも呼び出し…

―告白じゃないよね…?

―いや、期待はするな

―期待するなよ…



いくら言い聞かせても

呼び出された事実は変わらないからうれしくて、

つい顔がほころんだ。
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