アイシング、マイラブソング
彼女が長年続けてきた“歌”。

僕の心を大きく揺さぶった彼女の歌声が聴けなくなる…。



「そんな…もったいない!」



「えっ?」



思わず、立ち上がって叫んだ。


千架は引き気味なのか
少し身をのけぞらせた。



「俺…中学ん時に藤堂の歌に聴き惚れたんだよ?」



彼女の大きな瞳はより大きく見開いて、

驚いてる。



「CD出たら一番に買うんだから!」



「そんな…」




「藤堂の歌のファンはすでに、ここに一人いる!」




千架の方を向いて胸を張って言った。


鼻息も荒かったかもしれない。



「聴いてくれる人がいれば、歌えるもんじゃないのか…?歌手って」



めちゃくちゃな理由づけで言いくるめた。



すると千架はぷっと吹き出した。
< 55 / 271 >

この作品をシェア

pagetop