アイシング、マイラブソング
駅に着くと辺りはすでに真っ暗だった。

秋の夜風が思いの外冷たい。


「家まで送るよ!」


僕は張り切って声を掛けた。

だが千架は。

「大丈夫、自転車だし」

ちょっと寂しくなって、ヤケになる。

「送りたいな」

「…まだ付き合い始めだし…いきなりはちょっと…」

千架は戸惑いの表情をみせた。


―もしかして


「登下校もあんまり…?」

「それは時間が合えば良いんだけど…家まで来てもらうと家族に見られるし…」


―同じだ


その気恥ずかしさ。

すぐに彼女の気持ちを察した。


「わかった!ごめんね」


「ううん」


「気をつけて帰ってね」


「はぁい!」


子供みたいに手を挙げて、
その無邪気さがほほえましかった。


「藤堂はかわいいな」


そう誉めると、
千架は「あっ」というような顔をした。
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